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大阪高等裁判所 昭和53年(ラ)587号 決定

抗告人

東既制服株式会社

右代表者

大兼信助

抗告人

大兼信助

抗告人

大兼信由

右三名代理人

立石邦男

外一名

相手方

田丸株式会社

右代表者

田丸正二

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

一〈省略〉

二当裁判所の判断

(一)  本件訴状によれば、本件訴えは、相手方(原告)の抗告人(被告)東既製服株式会社に対する約束手形金請求、売掛代金請求、及びその余の抗告人らに対する商法二六六条ノ三に基づく損害賠償の請求を併合した訴えであること、右約束手形金請求の訴えについては民訴法一条、六条により東京地方裁判所及び千葉地方裁判所(松戸支部)に、売掛代金請求の訴えの管轄裁判所は民訴法一条、商法五一六条一項、民訴法五条により東京地方裁判所及び大阪地方裁判所に、各管轄があることが認められる。

(二)  ところで抗告人らは、商法二六六条ノ三に基づく訴えについては商法二六八条一項により東京地方裁判所の専属管轄に属し、本訴は大阪地方裁判所に管轄がない旨主張するので検討する。商法二六八条一項は、同法二六八条、二六六条に基づき取締役の責任を追及する訴えについて専属管轄を定めたものであつて、その趣旨は個々の株主が会社のため取締役の責任を追及する代表訴訟ばかりでなく、会社自身が取締役の責任を追及する訴えを含めて、株主の提起する代表訴訟の場合は会社または他の株主が、会社の提起する訴訟の場合は株主が、いずれも共同訴訟人として訴訟に参加することを容易にするためであり、株主以外の第三者が取締役を相手どつて直接損害賠償を請求する同法二六六条ノ三の場合を含まず、同法二六六条ノ三の場合は民訴法一条、一五条によるべきであり、一の訴をもつて数個の請求をする場合は同法二一条の併合請求の管轄によることもできると解すべきである。これを本件についてみるに、前示のように本訴中、売掛代金請求の訴えについては大阪地方裁判所にも管轄権があるから、商法二六六条ノ三の損害賠償請求の訴えを併合して提起する場合には民訴法二一条により大阪地方裁判所に訴えを提起することができるものというべきである。従つて、抗告人の右主張は失当であつて採用できない。

(三)  そうすると、大阪地方裁判所に商法二六六条ノ三による訴について管轄権がないことを前提とする本件移送の申立は失当であり、右申立を却下した原決定は相当であつて本件各抗告は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。

(下出義明 村上博巳 吉川義春)

抗告の趣旨、抗告の理由〈省略〉

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